まりあ様のおみちびき~秘密の妹は農家の天使⁉~
第5幕・天使の囁き【訳・村人にびっくりされてます】
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第5幕・天使の囁き【訳・村人にびっくりされてます】

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 我、黒森さんと二人で草むしる。
「ふう」
 太陽、熱し。
 日傘さしたる我は黒衣《こくい》纏いし。
 其の我をみる目あり。
「な、なんだ?」
「外国人か?」
 村人なり。
「…違います!天使です!」
 黒森さん止めし我。
「恥ずかしいから停止」
「なぜです⁉」
 云うこと聞かぬ黒森さん。
「天使?」
「あの黒い娘が?」
「でも確かに尋常ならざる雰囲気だが……」
「否、ちがう!あれは【悪魔】だ!」
 声響きし。青年《おとな》のこゑ。
「白霧……」
 黒森さんが呟く。
「あの黒き衣、間違いない!悪魔だ」
 白霧さんは神父だった。

「いえ、天使です。マリア様の御遣いです。天国のおばあさんが呼んだのです」
「そんな筈はない!」
 白霧さんと黒森さん、喧嘩し。
「あわわわ」
 周章てる村人達と我。
「ちょっと!喧嘩はやめてよ」
 すると、茶髪のセミロングに灰色の衣《ワンピース》纏いし少女がいう。
「だって天使だというのに」
「いや悪魔だ」
「ただの不審者でしょ」
「い、いや、怪しき者にあらず」
 我言い訳せり。
「天使なり」
「ちがう!」
「天使です!」
 喧嘩になる。
「追放だ!追放!」
 神父叫びし。
 それは困る。
「わ、我天使ガブリエルなり。我追放せし者、天罰あり」
「悪魔の戯言《たわごと》など怖くないわ!」
 神父さん憤怒。
「まあ、天使か悪魔かはおいといて…若者が増えるのはいいことよ」
 少女云いし。
「灰崎、しかし…」
「大体、天使や悪魔なんているわけないし」
「いる!いる!」
 神父さんと黒森さん怒る。
「追放!追放!」
 悪魔派多し。
「しかしもし天使で天罰が下ったらどうする」
 黒森さんが云う。
「…は」
 恐れる村人達。
「いや、悪魔だ」
 神父いう。
「でも神の天罰が」
「奇跡も起こせぬ天使など知ったことか」
「う」
 我戸惑いし。
「いや、奇跡をそんな欲にまみれた魂の者に見せるわけにはいきませんね」
「なにを言うか。逃げか」
 黒森さんと神父さん喧嘩。
 その時、認知症の老婆きし。
「おお、ガブリエル様おはようございます」
「いと高き【魔性】に供物を!【おはようございます!】」
「ところでなんの話してるのかえ?」
「さくらおばあちゃん」
 灰崎さんさくらさんに説明せし。
「なんだ。奇跡ならもうあるじゃないか」
「え?」
 さくらさん云う。
「黒森さんのとこに嫁が来たこと」
「ち、違う!それは奇跡ではない!大体、ガブリエル様は嫁ではない!」
 黒森さん周章てる。
「ははは。最期に黒森さんの嫁がみれて光栄だよ」
「最期?」
 我混乱し。
「明日、わたし墓場《老人ホーム》行きだからねぇ」
 さくらさん寂しそうな顔し。
「おばあちゃん、その話は…」
 灰崎さん戸惑う。

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「あのおばあちゃん、老人ホーム行っちゃうんだ……」
 黒森さん戸惑う。
「いつも寂し気にしてたなり」
「なにかできないかな?」
 黒森さん云う。
「野菜をあげたりとか……」
「物々交換あまりよろしくあらず」
「そうか、ならどうすれば」
 我畑の草みていう。
「うむ!」

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老婆、家《老人ホーム》引っ越しの当日。
「では、行こうかね」
「うん」
灰崎さんおばあちゃんについていく。
駅の電車の中乗る祖母と孫。
「じゃあね」
見送る黒森さんと我。

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「また老人ホームに来ておくれよ」
「うん」
灰崎は頷いた。
「あ、ガブリエルさんから手紙貰ったよ」
「はて?」
「電車の中で開けて欲しいって。なになに…右側の窓をみてて欲しい?」
 灰崎さんとおばあちゃんは窓をみた。
すると。
 野原いっぱいに「また会いましょう」の文字が。
しかも、ホースの水で虹がかかっている。
「わあっ…!」
感動する灰崎さんとおばあちゃん。
黒森さんとガブリエルさんが手を降っている。
「みてみてー」
電車の中の他の人達もびっくり。
「いやあ、虹なんて久しぶりだよ」
感動するおばあちゃん。

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 灰崎嬢村帰りし。村パニックになり。
「雑草が文字になってるぞ‼」
「奇跡だ」
 我そんなつもりなし。
「待て待て、ただ草を抜いただけだろうが!」
 白霧神父怒りし。眼鏡の奥の眼光鋭し。
「しかし、この行為によりおばあさんは救われました。傷を一瞬で癒したり、神の幻をみることだけが奇跡なのですか?」
 黒森さんいう。
「それならば、この世の全てが奇跡ということになる!」
白霧神父は怒る。
「事実、そうではないですか!」
「え」
「この世の万物、全て神の奇跡ではないですか。悪魔だって、神の創造物だ。なぜ神は悪魔を作ったんです?必要だからでしょう。大体、彼女が悪魔だったとして、元は天使であることに変わりはありません」
「そんな、屁理屈な…」
「奇跡は努力するなという意味ではないと思います。努力した未来《さき》にこそ、奇跡はある。そう思いませんか?」
「たしかに、私も人間だが、信仰を守るため努力している」
 白霧神父俯く。
「だが、世には神を信じぬ無神論者どもが蔓延っている。神は、奇跡をみせてくれない」
「しかし、神はいまみせたではないですか」
 黒森さん説得せし。
「努力すれば奇跡は起きます。神はいないのではありません。神はキリストの御心に、十字架に滴る苦難の血潮の果てに、神は其処に宿る」
「おお…汝、悪魔を天使として迎えいれようというのか」
「あなたの隣人をあなた自身を愛するように愛しなさいと聖書にも書いてあるじゃないですか」
「しかし…」
「ああ、もう天使か悪魔かわからないけどさ」
 灰崎さんセーラー服風になびかせ、颯爽と登場。
「ガブリエルはガブリエルでいいんじゃない?とりあえずここにいてもらいましょうよ。≪奇跡≫は起きたんだからさ」
「だが、あの異形の格好は……」
「天使か悪魔かは、格好より魂の問題じゃない?」
 灰崎さんはプリーツスカートのポケットから腕章《わんしょう》を取り出す。
「まあとりあえず、≪村長≫が善いといってるんだから、いいのよ」
「へ?」
 驚く我。その腕章には≪蔓紅村村長≫の金文字記されん。
「まあ、≪村長≫がそういうなら……」
「別にいて貰っていいか」
 村人達も納得せし。
「仕方ないな…」
 白霧神父然しまだ諦めておらず。
「まあ、とりあえず一応ガブリエルさんは、≪天使≫のガブリエルさんということで」
 灰崎さんはいう。
「私はただのちょっと変わった女の子だと思ってるけどね」
 灰崎さんウィンク。

 こうして、神父の白霧さん、女子高生村長の灰崎あまねさんと知りあいになりし。

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