気高き国王の過保護な愛執
人に言えるのが嬉しいらしく、くくくと得意そうに笑っている。

ローブ時代のクラウスが神出鬼没だったのも、モウルを使っていたからだ。おそらく彼はルビオから伝授され、モウルに精通していたんだろう。


「あらっ、噂をすれば、クラウスだわ」


イレーネが顔を向けたほうを見れば、渡り廊下からこの中庭に向かって駆けてくるクラウスの姿がある。


「なにかしら、ひとりでニヤニヤしてる。ほんと根暗ね、あいつ」

「イレーネ様、口を慎みましょう」


しかし実際、クラウスはこらえきれないようで、忍び笑いを漏らしていた。


「クラウス様」

「おや、いいところに」


声をかけると、仕入れたての噂話を聞かせる町娘みたいな、弾んだ足取りでやってくる。


「いったいなにがあったわけ?」

「それが、どうやら王妃たち、ジャン・ミュイが捕らえられたことをまだ知らなかったようなのですよ」


「のんきねえ!」とあきれたのはイレーネだ。


「私とリッカを閉じ込めたのは、あの男の独断だったわけね」

「先ほど、私のもとに、部屋へ来るよう妃殿下から命令があったのです。私はジャン・ミュイのふりをしてなにか聞き出せないかと思い、行ってきました」

「…………」


イレーネとフレデリカは、この男の人の悪さに黙った。ふりなどできるわけがないと、自分で言っていたじゃないか。

正体を明かし、王妃をからかう目的だったのは間違いない。


「すぐばれた?」

「いや、それがそうでもなかったんです。なぜなら王妃は寝台の、紗幕の中におわしたので」

「えっ」

「あの小物、なんと王妃の伽の相手だったんですよ! 先ほども王妃は、私に相手をするよう命じました。昼間っから! この私に!」
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