気高き国王の過保護な愛執
クラウスは、ルビオの隣にひざをつき、一緒に穴の中を眺めた。


「そうすると、おふたりがここを選んだ意味がわかります。彼らは王妃の思い通りにはなるまいと、ここへ隠れた。自分たちを蝕む毒が、王妃の企みであると気づいていた」


ルビオはなにも言わない。


「あなたではないと知っていた」


忠臣の右腕が、王の背中に添えられ、親しい友人がするように、肩を力強く抱いた。ルビオは無言で、揺さぶられるままになっている。


「恐れていたのではないですか。彼らがあなたを恨んで逝ったのではないかと」

「おれは身勝手だ」

「私はあなたの、そういう人間らしさが好きですよ」


フレデリカは、床に置かれた聖書を取り上げた。奇跡のように、ほとんどそのまま残っている。


「すべてを正しましょう、陛下」


クラウスの言葉に、ルビオがうなずいた。


* * *


王都の半円形の中央部分、王城に向かう橋の手前に広場がある。

そこには階段とバルコニーがあるだけの、石造りの高い塔がある。使われていないときは開放され、子供たちが遊んだり、周囲でマーケットが開かれたりする。

今ではそこは封鎖され、本来の用途に向けた準備が行われていた。


「『血まみれ王を追放せよ』『王座を奪還せよ』。血の気が多いわねえ。兄さまを追放して、誰が代わりをすれば満足なのかしら。言うのは簡単だけど、無責任ね」

「真実が明るみに出れば、いわれのない誹謗も終わるでしょう」

「どうだか。どうせこの世論もあの色ボケ王妃が操ってるんでしょ。血まみれが終われば、べつのなにかを持ってくるだけかもしれないわよ」


イレーネの口の悪さをたしなめようとしたが、フレデリカはたしかにそうかもしれないと納得してしまい、ため息をひとつついただけに終わった。
< 154 / 184 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop