気高き国王の過保護な愛執
「これをどうぞ。香りもいいんだけれど、やけどなどで攣った皮膚を柔らかくしてくれるのよ」


老人が顔を上げた。ローブの陰になって顔立ちは見えないが、頬の片側から首にかけて、痛々しく引き攣れているのがはっきりとわかる。

震える手が小瓶を受け取った。


「失ったものを取り戻したいかね」


しわがれた声が、突如話しかけてきた。

フレデリカはびっくりし、それから口元に手をあてて考える。失ったもの。


「心当たりがないわ」

「あなたではなく、あなたの大切な人の」


はっとした。ローブの陰から、射貫くような目がこちらを見上げているのを感じた。


「ごめんなさい、占いは好きじゃないの。信じてしまうから」

「怖いか」

「ええ、怖いわ」

「では黙りましょう、こちらのお礼に」


胸に小瓶を押し抱き、老人は再び、丁寧なお辞儀をした。


「お大事にね」


フレデリカは声をかけ、自室のある西のパラスへ向かった。

失ったもの。

それはもしかして、ルビオの記憶のことだろうか。取り戻す方法を、あの老人は知っているのだろうか。

胸が騒いだ。

ルビオの記憶を取り戻す。そのことについて考えると、なぜか心がざわつく。



湯をもらいに、侍従用の厨房に行ったら、クラウスに会った。


「足は大丈夫ですか」

「まさに今、ちょっと使ってしまったので、揉みほぐそうとしているところです」
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