気高き国王の過保護な愛執
灰色の瞳が驚愕に見開かれ、あちこちをさまよい、再びフレデリカの上に戻ってくる。そこには落胆と、当惑が浮かんでいた。

青年は包帯の巻かれた左肩に手を置き、「弱ったな」と途方に暮れた声を出す。

ぽかんとするフレデリカに気づくと、遠慮がちな笑みを浮かべ。


「わからない」


ばつが悪そうに首を振った。




彼をルビオと呼ぶことにした。


「見事な金色の髪だもの、ぴったりでしょ?」

「このへんの方言かい?」


ルビオが首をひねる。

フレデリカは、包帯をほどいているオットーと目を合わせた。

“三度目の国”という国名が表す通り、この地方は何度も統一されては解体され、統治者と被統治者が入り混じって暮らしている。

大昔、帝国のあった時代からここに根を張っている人間と、統治のために移住してきた貴族や富裕層とでは使う言語が違う。フレデリカたちのように市井で暮らす者は、爵位を持てる家柄にあっても両方の言葉を扱い、地域と交流している。

ルビオというのは土着の言語で、金色の髪を指す言葉だ。馴染みがない程度であればわかるが、理解すらしないとなると──…。


「腫れも引いているし、膿んでもいない。お前さん健康だね。リッカ、包帯を巻いてやってくれ。その前に身体をきれいにしてやりなさい」


フレデリカは一瞬ためらい、「わかったわ」と支度を始めた。




「いい香りがするね」

「神経を休めるハーブのオイルよ。あなたが眠れなくなったりしないように」


とはいえ、そんな繊細ではなさそうだとフレデリカは思った。

表に出した椅子に座らせ、湯で絞った布で上半身を拭く。今しがた洗った金色の髪は、乾きかけてさらさらと額にかかっている。

いかにも手入れの行き届いた髪、肌、爪。磨き上げられた筋肉、それを程よく覆う脂、なめらかな皮膚。
< 6 / 184 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop