気高き国王の過保護な愛執
フレデリカは手負いの獣をなだめるような感覚で、震えている背中をなでた。その背中も汗に濡れ、ひんやりした肌の下が、熱を帯びている。

大丈夫よ、大丈夫。

口の中で話しかけながら、痛みに耐えた。

ようやく矢が抜けたとき、青年は再び気を失っていた。


* * *


「あらっ、おはよう」


翌朝、食事を持ってフレデリカが納屋を訪れると、青年は長持の上で半身を起こしていた。いかにも今起きた様子で、ぼんやりと木造の屋内を見回している。

屋根と壁の間に開けた明かり取りの隙間から差し込む日差しが、白い裸身を照らしていた。しなやかな骨格に均整のとれた筋肉。

まるで絵画か彫像ね。

フレデリカは感心しつつ、彼のそばの木箱の上に食事のトレイを置いた。青年の目がトレイに落ち、次いでフレデリカを見る。彼女はその視線の要求に応えるべく、「あなたは川で倒れていたのよ」と説明を始めた。


「昨日の日暮れ前、川のほとりで私があなたを見つけたの。傷を負っていたから、ここに連れて帰って父が手当てをしたわ。ここは──」


言いながら、戸口から見える庭と屋敷を手で指し示す。


「今じゃ見る影もないけれど、曽祖父の代までは立派な領主館だった。戦争が終わって、浪費家の祖父が家財を失い、あちこちに迷惑をかけたから、良識のあった父は爵位を継がずに返上したの。それまでは、我が家はウーラント侯爵家だったわ。母は亡くなっていて、私と父のふたり暮らしよ。あなたのことはひとつも知らない。なにか聞きたいことはある?」


青年は無言で、印象的な瞳をまたたかせた。

警戒しているふうでも、フレデリカの言葉を疑っているふうでもない。ただじっくりと時間をかけ、事情を飲み込んでいる様子だ。

やがてその口が開いた。


「助けてくれてありがとう」


姿から想像した通り、いやもしかしたらそれ以上に、清々しく凛々しい声だった。そしてその発音は、明らかに彼の高い身分を表していた。

フレデリカは反射的に、膝を折って感謝の言葉を受けた。


「私はフレデリカ。あなたは?」


青年は柔らかな笑みを口元にたたえ、再び口を開いた。だが唇の間からは、なにも出てこなかった。
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