気高き国王の過保護な愛執
「封をして届けてくれ」

「かしこまりました」


書簡を預かり、クラウスが出ていく。

ルビオは引き出しを開け、年季の入った日記帳を取り出した。小さな字でびっしり埋まっているページを、順に繰っていく。

王城に連れ戻された──当時の意識としては、連れてこられた、だったが──ルビオに、『ディーターは日記をつけていましたよ』と教えてくれたのはクラウスだった。

これには救われた。それを読めば、記憶が戻らないなりにディーターを装うことができるのではないかと思ったからだ。

人目につかないところに隠していたら厄介だと不安だったが、机の一番上の引き出しに堂々と入っており、しかし鍵がかかっていた。

落胆しかけたところ、隣の引き出しで、鍵は見つかった。


『ぼくはバカだったのかな』

『周到に隠すほどの内容を書いていなかったんでしょう。しかし個人的な日記という体裁は整えておこうとしたんでしょうね。彼らしい折衷案です』


ふうん、とルビオは納得し、その日から少しずつ、日記を読んでいくことにした。

倹約家だったのか、新しい日記帳を買うことすら面倒がる無精者だったのか、日記はどうやら、最後のページまで書かれた後、最初のページに戻り、行間を埋めるようにちまちまと書かれていた。

一か月分ほど読んでからそのことに気づき、どうもインクの褪せ具合にムラがあり、内容もちぐはぐだなと感じていた理由がようやくわかった。

自分さえわかればいいと考えていたんだろう、日付は入っているものの、暦は書かれていない。だがおそらく、記憶をなくす直前からさかのぼって二年分ほどのディーターが、この中には存在していた。

とはいえ。




「よくこんなつまらない日記を、書き続けられるなあ、と思って」


うんざりと言うルビオに、「そうでもないわよ」とフレデリカは興味深そうに日記帳を眺める。


「ほら、ここなんて」

「どれ?」


覗き込むと、フレデリカが自分で調合する、なんともいえず心を落ち着かせる香油の香りがふわりと鼻孔をくすぐった。
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