気高き国王の過保護な愛執
王城が騒がしくないとき。たとえば客人がなく、各地の領主から厄介ごとが持ち込まれることもなく、我が物顔に采配を振るう王妃も静かで、みなが安寧を貪っているようなとき。

ごくたまにやってくるそんな夜、ルビオはフレデリカを部屋に招く。


「百三十二って書いてある」

「その日はそれしか書いてないんだよね、そもそもどの日も、ほんとひと言しか書いてないけど」

「これ、なんの数字かわかった?」

「いや」

「たぶんね、体重よ」


フレデリカは聡明な目つきで、椅子に座るルビオの身体を、頭のてっぺんからつま先まで観察した。


「今のあなたは、…百五十ポンド前後?」

「合ってる。今朝の斤量で百四十九だ」


王の一日は医師による健康診断で始まる。医師が部屋までやってくるので面倒というほどではないが、毎日するほどのことだろうかとルビオは毎朝思う。


「これを書いた頃、あなたは痩せすぎだったのよ、注意されたのか、自分でまずいと思ったのか、書き留めておいたのね」

「それでわかった、この日から、やけに食事の内容が書かれてるんだよね」

「気をつけるようになったんだと思う」


だがそれも、三週間ほどで終わっている。今が理想的な体重だとして、十七ポンドの増量が、こんな短期間でまともにできると思えない。

おそらく、増量か日記に書くことの、どちらかに飽きたのだ。


「ぼく、ダメな王子だったんじゃないか?」

「そんなことないわ、すごく人間くさくて、いいわよ」


当初、この日記のあまりの内容のなさに、実はこちらは囮で、部屋のどこかに本物の日記が隠されているんじゃないかと疑ったりしたのだ。

半年かけて、壁や床まで叩いて徹底的に探したが、なかった。よく考えたら、囮にしたいのなら、むしろもう少し真面目に書くだろう。

そんな愚痴を聞きながら、フレデリカはくすくす笑い、日記のページをめくる。


「イレーネ様に腕輪をあげたのは、一昨年の夏ね。うん、やっぱり書いてない」

「そういう大事なことに限って、書いてないよね?」

「書いてないからいいのよ。あなたはとても照れ屋で繊細で、自分が人にしてあげたことや、心に秘めておきたい大切な出来事は、文字にできない人だったの」
< 68 / 184 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop