告白の時間
「このかわいい子は、さっちゃん、こちら花園君」

生島さんが紹介してくれた女の子は自分を見上げると、ニコリと笑った。気の強そうな瞳が印象的だ。

「がんばって…」

小さなかわいらしい声で、確かに自分に向かって言った。妙に心に響く声だった。

「娘さん?」

「そうだよ~さつきってゆーの」

「ああ~」

何とはなしに納得してしまった。生島さんが千歳の事をさきちゃんと呼ぶわけを…千歳のフルネームは、千歳さつきだ。

「偶然なんだけどね~」

何かふと″運命″の二文字が頭によぎった。まだ、間に合うだろうか…


-翌日-
千歳を誘ってドライブに出た。思いつきで、昔ブラスバンドの皆と行った事のある牧場を目指す。
中学以来、何度か来てみた事があるけど、千歳の店からこんなに近いとは意外だった。

明日の晩、帰る事を伝えれば用は足りていた。返事はその時までに考えて欲しいと言うためだけに、ここまで連れて来てしまった。

こんな風に千歳といられるのも、最初で最後かもしれない…ってあれ?良く考えたら、千歳と二人で出かけるのって初めてじゃないか!?

そうだ…オレと千歳の間にはいつも誰かしらいたんだっけ…
そうなるように仕向けていたのは…結論を遠ざけていたのはオレ?それとも…

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