華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~


王子の口調が変わる。

目の前に立つ人は、王子ではなかった。
王子の鎧を脱いだ、たったひとりの青年。

その名を呼んでしまえば、もう後戻りできないと思った。
逃げるのなら、呼んではいけない。


……分かってる。
そんなこと、言われなくたって十分に理解している。

でも、呼ばざるを得なかった。

ダメだと分かっているのに、その意志と反して本能が彼の名を声に出そうとしている。



――いけないわ、ソフィア。


その名を呼んではいけない。

あなたにはその資格がない。
どんなに彼が私を求めていようと、これ以上受け入れてはダメなの。

ダメよ、言わないで。

口にしてはいけない。


――ソフィア……!!


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