華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~
私は言葉を失くす。
別に、王族の人間が何人の妻を持ってもおかしくはない。
王族には、直系の子孫を残す義務がある。
もしものことを考えて何人かの側妃を置くことは、王族の中では普通のことだ。
でも、私は父のことがあるから。
母という人間がいながら、何人もの女をはべらかせて。
その女たちは、いかに父からの寵愛を受けようと、必死で父の前では猫を被り、裏では他の愛人の悪口をまくしたてる。
言われた側はさらにその悪口を重ね、愛人たちの関係は止められないほどの険悪ぶりを加速させていく。
やがてその鬱憤は目に見えるように形となって表れていった。
ドロドロとした感情。
作り笑顔の裏に隠された、黒い本心。
女同士のいざこざを間近で見ていて、とても嫌な気分になった。
自分にはその気はない。
王子にはこれっぽっちも特別な感情はないから。
でも相手は、王子が自分以外の側妃を娶ったと聞いたら、いい思いはしないだろう。
仕方ないと思い聞かせても、その黒い感情は膨れていく。
私は母のようにはなりたくないの。
そして、父の周りにいた女たちのようにもなりたくない。
一番恐れていたこと。
それが、現実となって押し寄せてこようとしている。