華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~
「そう言われれば、そうか。……しかし、それは過ごしながらおいおい慣れていくだろう、心配しなくてもいいと思うぞ?」
本当は慣れたくはないが。
……でも、ここで生活する以上、慣れるしかないのか。
「ああそうだ。話は変わるが、この部屋には生活するのに必要なものは一通り揃えてある。そしてなにかあれば、ソフィアの専属となる侍女、ナディに言ってくれ」
王子は部屋の入り口にいる騎士に目配せした。
すると、部屋にひとりの女性が入ってくる。
黒のワンピースに白のエプロン。
髪を後ろでひとつに纏め、化粧もシンプル。
いたって普通のメイドだ。
「失礼致します。これからお世話になります、ナディと申します。よろしくお願い致します、ソフィア様」
そう言うと、ナディは深く一礼をした。
しかしその後、顔を上げたときに見せた表情は、どうも優れない。
感じるに、私の侍女になることをあまり快く思っていないのだろう。
「では私はこれで失礼する。またあとで、ソフィア」
そう言って優し気な笑みを私に見せると、殿下は踵を返した。
王子の表情に少し、胸が鳴る。
あれだけ牢にいたときは不機嫌そうな表情ばかりしていた王子だったけど、ああいった表情もできるのねと、妙に関心してしまった。