華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~
王子が案内した部屋は、二階に上がって廊下を奥に進み、行き止まった手前にあった。
濃い茶の扉。
それはここに来るまでに通り過ぎた、いくつもある部屋の扉と同じもの。
一番端にある部屋だったからいいものの、中間であれば間違えてしまうだろう、なんて呑気なことを考えてしまう。
「ソフィアはこれからここで生活してもらうことになる」
王子が扉を開けて、先に私を部屋に入れた。
部屋の中はこじんまりとしていて、城の中にある部屋にしては質素なものだった。
それでも環境は地下牢に比べたら、天と地ほどの差。
寝台はダブルベッドだし、布団だってふかふか、小さいけれど湯あみをできる場所もある。
机も椅子もあるし、鏡台だってある。
生活するには申し分ない。
「牢の暮らしに比べたら、天国に感じるだろう?」
王子はくくっと笑いながら言う。
「それは、……そうですけど」
「なんだ?嬉しくないのか?」
「嬉しくないっていうか、その、本当ならこの城の中で生活するなんて思ってもみなかったので、実感が湧かないというか」
この部屋で、どういった毎日を過ごすのか。
私はどう王子と接して、生活していくのか。
先のことを考えたことがなかった私からしたら、うまく頭の中の整理がつかない。