あべこべの世界
 こぼしやしないかと見ているこっちはハラハラする。

 カップを起用に掴んだのはいいが、やはり口元に運ぶ寸前でコーヒーがこぼれ、直美の制服の白いシャツに茶色い染みを作った。

「熱っ。やっちゃった」

 わたしはウェイトレスを呼び、新しいおしぼりをもらうと直美に手渡した。

「サンキュ。敏子」

 直美はポンポンと右の胸元をおしぼりで叩く。

 絶対にEカップはある。

 いろんな小細工をしているとしても、服の上からこれくらいのお大きさに見えるのだから成功だ。

 そもそも女の体なんてウソで作られているのだ。

 いや、逆に何もしない女の体こそがウソなのかも知れない。

 わたしはタバコの煙をゆっくりと吐きながら、突然、不成功な自分の体がとても恥ずかしくなった。

 このスカートの上にのったお腹の脂肪や夏場は股ずれをおこす太もも、しもぶくれの顔まわりについた脂肪も、すべて切り取って捨てたくなった。
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