あべこべの世界
 孝志の低く先が丸い鼻を見ながら、孝志が健二のようなイケメンだったら、わたしの今の気分はもっとルンルンなのかな?

 と考えてみた。

 孝志が健二だったら、手に持っているのは近所のスーパーの袋じゃなくて、もっと高級でお洒落なお店のもので、そこから顔を出しているのはこだわりのフランスパンとか珍しい野菜だったりするはず。

 それとも、健二だったらただの白ネギや白菜もなにか特別なもののように見えたりするのかな?

 急に寒気がして、わたしはクシュンと小さいくしゃみをした。

 春先は服選びが難しい。

 昼間は暖かくでも夜はけっこう冷えたりする。

 孝志の手が私の両肩に触れた。

「敏ちゃん、これ着ておきなよ。ぼくは太ってるから寒くないから」

 わたしとほぼ同じ目線の高さの孝志は、自分の上着をわたしの肩にかけボタンを丁寧にとめた。


 これが健二だったら、今わたしの周りにはピンクの花びらが舞っているのだろうか?


 まだ固い桜の蕾の下、わたし達は家へと急いだ。
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