あべこべの世界
長い1日
 会社に着くまでの道のりも何人もの男性とすれ違い目が合った。

 なかには女性までもがわたしをじっと見つめる。

 わたしは最後ほとんど走るようにして会社のあるビルの中へ入り、更衣室には向かわずトイレに駆けこんだ。

 鏡に映る自分の姿を食い入るように見つめる。

 顔も、髪型も、服もどこもおかしなところはない。

 後ろ姿も確認する。

 洗面台の前でわたしはくるくる回って何度も確認したが、変なところはない。

 もう一度鏡に映った自分の顔をじっくりと見る。

 少し垂れた左右不対称の小さな目。

 必死に大きく見せようと努力したのが分かるアイメイク。

 低い鼻は開いた毛穴が目立たないようにしっかりとファンデーションを厚塗りしたにもかかわらず、もうすでにテカって毛穴がうっすらにじみ出ている。

 四十分かけたメイクも所詮はこんなものだ。


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