あべこべの世界
大切なもの
 水たまりをよけながらわたし達は歩いて二十分ほどの公園へとゆっくり向かった。

 軽く散歩するのにちょうどよい距離だ。

 いつもの桜の木のある家の前を通りかかる。

 来週初めぐらいには咲き始めるだろうか?

 週末はちょうど満開になるかもしれない。
 
 ちょうど近くの女子校の下校時刻にあたったようで、次から次へと可愛い制服に身を包んだ女子高生たちが歩いてくる。

 チェックのプリーツスカートに赤いリボンタイ、わたしの通った高校もこれくらい可愛い制服だったらなとぼんやり見ていたら、わたし達とすれ違った女子高校生の一人が孝志をちらりと見たのにわたしは気づいた。

 そのあと何人もの子がちらりと孝志を盗み見るようにし、隣なりの子の耳元でヒソヒソとなにかを語りかけ、嬉しそうにクスクス笑っている。
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