あべこべの世界
「桜のある広場まで行こうか?」

 お弁当はいつも孝志が作るのだけれども。

 公園の奥にはお花見にぴったりの大きな広場があった。

 毎年桜のシーズンの週末は大賑わいをする。

「どれくらい桜の蕾が大きくなっているか見に行こうよ」

 孝志はわたしの手をひいた。

 その手はホットコーヒーでよく温まっていた。

 わたしもココアを持っていたのに孝志の手の方が温かい気がする。


 桜の広場に着くと孝志は素手で雨で濡れたベンチを拭き、その端にちょこんと腰かけた。

 自分の隣なりも同じようにして

「こうやって端に座ればたいして濡れないよ」

 とわたしを見上げる。

 わたしは小さく頷き、孝志の横に腰かけ大きく膨らんだ桜の蕾を眺める。
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