あべこべの世界
 来週にはここにたくさんの人が押しかけて、お祭り騒ぎになるんだろうな。

 孝志と一緒にきた去年の春のことを思い出す。

 お弁当はわたしの好きなものばかりだった。

 お稲荷さんに、甘い卵焼き、きゅうりをハムで巻いたもの。

 孝志はいつも自分はなんでも好きだからと、わたしの好きなものばかり作ってくれる。

「今年もお稲荷さんと甘い卵焼きがいい?」

 孝志は嬉しそうにニコニコしている。

「お花見楽しみだね。来週末かな?」

 わたしは、ふとあることに気づいた。

「それとも、今年はなにか他のものがいい?」

 孝志はわたしの返事を待たずに続ける。

「まえに敏ちゃんがいいねって言っていたおにぎりサンドがいいかな?あれキレイだし美味しそうだよね。作るのもそんなに難しそうじゃないしさ」

「孝志」

「なに?おにぎりサンドはいや?」

「今年もお稲荷さんと甘い卵焼きがいいな」

 わたしはゆっくりと言った。

「去年と同じがいい」

 孝志はこくりと頷いた。
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