凪ぐ湖面のように
05)デートらしきもの
湖陽さんと賭けをしてから早一ヶ月が過ぎた。

急激に下がった気温に、早くも毛布を出した私は夜が待ち遠しい。
晩秋の夜長、ぬくぬくのお布団の中で、好きな小説を読みふける。至極の喜び。幸せな時間だ。

それを湖陽さんに言ったら、「いつも思うけど、君の幸せって本当に安上がりでいいね」と、褒められたのか貶されたのか分からない言葉が返ってきた。

おまけに、「僕なんて暑がりの寒がりだから、朝夕、もう暖房を入れているよ。不経済だろ」と笑う。

なるほど、彼は省エネタイプの人間ではないようだ。

こんな風に以前と変わらない二人だが、少しずつプライベートをオープンにしながら約束通り恋人ごっこを続けている。

最近は「行楽のシーズンだぁ!」と湖陽さんが何度も言うので、ドライブを兼ねて郊外へ赴くことが多い。

世間ではこれをデートと呼ぶらしい。
実際、夕姫さんから『デート、楽しんできてね』の言葉を掛けられ、見送られている。
< 69 / 151 >

この作品をシェア

pagetop