ひとはだの効能
「だって……あの子は?」

「あの子って、莉乃ちゃん? アルの飼い主の」

 俺が訊くと、香澄さんは唇を噛んでこくりと頷いた。

「莉乃ちゃんは大事なお客さんだよ。さっきもデートに遅刻した彼氏の代わりに食事に付き合ってただけ。香澄さんが気にするようなことは何もないよ」

「えっ、彼がいるの?」

「うん、出来立てほやほやの」

「なんだ、私てっきり……」

「……安心した?」

 俺の告白を、少しは信じてくれたのだろうか。香澄さんは肩の力を抜いて俺の胸に顔を埋めると、「うん」と小さく呟いた。

「それにしても、なんでそんな勘違いしたの。俺そんな疑われるようなことしたっけ?」

 常連さんは何人かいるけど、別に莉乃ちゃんだけを特別扱いしたつもりはない。コーヒーが飲めるように手伝ったり、葉月くんのことで相談に乗っていた分、妹みたいな感じで可愛がっていたとは思うけど。

「だって、彼女よく似てたから……」

「似てるって、誰に?」

「……祈ちゃん」

 首を傾げる俺に、香澄さんは今にも消え入りそうな声でそう告げた。

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