ひとはだの効能
「……香澄さん」

 彼女の言葉に、優しさに、目頭がじわりと熱くなる。つんと痛んだ鼻を指先で押さえ、涙を堪えた。

「あの日、俺も香澄さんと同じこと考えてたよ……」

 はじめは、長い間思い続けても、結局は報われなかった気持ちをすべて、香澄さんにぶつけた。でも飽くことなく続く行為の最中さなか、香澄さんが抱える痛みに気づいた瞬間から、俺は香澄さんを苦しみから解放することだけを考えた。

 同じだったんだ。傷ついたお互いを救いたい一心で、あの夜俺たちは、懸命に抱きあった。

 大きく息を吐き出して、目蓋を閉じる。覚悟を決めて、彼女の顔を見つめた。

「香澄さんのその気持ちは、ただの同情? それとも……」

 発した声は震えていた。鳴りやまない心臓の音がうるさく響く。辛抱強く彼女の答えを待っていると、ややあって、香澄さんはなぜかとてもすっきりした顔で再び俺を見上げた。

「……私も、遊馬くんのことが好き。あの夜からずっと、あなたのぬくもりが忘れられなかった」


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