ひとはだの効能
 たまらず、香澄さんを腕の中に閉じ込めた。艶やかな黒髪に顔を埋《うず》め、ずっと焦がれていたその香りを存分に味わう。

「……嬉しい。俺も、大好きだよ香澄さん」

 そう口にすると、身体中があたたかな物で満たされていくのがわかる。

 自分の想いを伝えることができるのって、こんなにも幸せなことだったんだ。これまで俺は、どれだけ香澄さんへの気持ちを押し込めて来たのか、それをどんなにつらいと思っていたのか、ようやく気がついた。


「ちょっと、遊馬くん苦しい!」

「あ、ごめん」

 『もう二度と離したくない』その気持ちが強すぎて、俺は力の加減を忘れていたらしい。苦しがる香澄さんに、バンバンと背中を叩かれて、ようやく我に返った。

「ちょっと……落ち着こうか」

「……うん、そうだね。ちょっと落ち着こう」

 そう言いながらも、なかなか身体を離そうとしない俺に呆れたのか、香澄さんが苦笑いを浮かべて俺を見上げる。


「ごめんね、まさか両想いだったなんて思ってもみなかったから、俺……本当に嬉しくて。愛してるよ、香澄さん」

 繰り返される愛の告白に、大きく目を見開いたままフリーズした香澄さんの顔が、ぼぼぼっと真っ赤になった。

< 128 / 147 >

この作品をシェア

pagetop