ひとはだの効能
「……なに?」

「いや、美味しそうに食べるなあって思って。毎日同じもの食べて飽きないの?」

 絶対に叶わないと思っていた想いが通じたクリスマスイブの翌朝。俺は香澄さんのために、彼女の誕生日の朝に「次は食べさせてあげる」と約束したクロックマダムを作ってあげた。

「飽きない飽きない。この味本当に大好き。私がもう見たくない、っていうまで、毎朝クロックマダム作ってね」

 俺が想像していた以上に、香澄さんはクロックマダムを気に入ってくれた。それ以来俺は、彼女のためにこうして毎朝クロックマダムを作り続けている。

「でもさ、気にしなくていいの? これって結構カロリー高いと思うよ」

 最近頬っぺたがふっくらしてきた気がすると、実は彼女が気にしていることを俺は知っている。

「うーん……。私も色々考えたんだけどね、今はちょっと多めにカロリー摂るくらいがちょうどいいと思うの」

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