ひとはだの効能
「コロンビア・アンジェリカですね。ただいま」

 どこまでもマイペースな香澄さんに、クールで実は結構毒舌な菅井さん。素でやり取りをする二人をはじめて目の当たりにした時は、俺もびっくりして、何とかして二人を宥めようとしたが……。

 この二人にとっては、これが通常営業らしい。今ではもう、すっかり慣れてしまった。

「岸川さ、確か明日は検診で休暇申請してただろ? そんなんで病院いったら、医者に怒られるんじゃないの」

 香澄さんの、以前より少しだけふっくらした頬に向かって、菅井さんがくいと顎をしゃくる。

「えーっ、だってもう五カ月だよ。ようやくつわりも収まったんだし、赤ちゃんのためにも、たくさん栄養取らなきゃいけないでしょ」

 そう言いながら、香澄さんが愛おしそうにお腹を撫でる。その顔はもうすっかり母親の顔で、何とも言えないくすぐったいような気持ちが俺の中に込み上げる。

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