ひとはだの効能
「確かにPregareの名前は祈ちゃんからもらったけど、でもそれだけじゃないから」

 意味がつかめないのだろう。香澄さんが「ん?」と小さく首を傾げる。

「あの店は……Pregareは、俺の祈りなんだ。俺の淹れる一杯のコーヒーや紅茶が、みんなを幸せにしますように。そしてここを訪れるすべての人に幸せが訪れますようにって」

 香澄さんの表情からはもう眠気は消えて、今はしっかりとした瞳で俺のことを見つめている。

「俺はずっと祈ってたよ。香澄さんが幸せになりますように。できるならこの手で、幸せにできますようにって」

「遊馬くん……」

 一度は引いた涙の雫が、またぽろぽろと彼女の頬を濡らす。

 半年前、三年ぶりに再会するまでは、一見気の強そうな、人前では常に凛とした空気を纏う彼女が、こんなふうに涙を流す、感情豊かな女性だなんて知らなかった。

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