ひとはだの効能
『正直言ってイマイチ』

 俺のほうも甘えて、香澄さんにはつい正直に答えてしまう。

 自分一人ではじめた店。一緒に働くやつもいない。

 三年前までは、夕さんや祈ちゃんと時折ぶつかりながらも毎日楽しく働いていたのだ。自分で決めたこととはいえ、こういう時は“自分の店を持つ”ということの厳しさを嫌というほど思い知らされる。

 ……格好悪いな、俺。

 年上とはいえ、よりによって香澄さんに取り消せないメッセージを送ってしまったことを今さら後悔する。

『私にできることない? 今日仕事終わりに寄るね』

 続けて送られて来たメッセージに目が吸い寄せられた。

 二週間ぶりに、香澄さんに会える。

 でも、こんなふうに甘えていいものか。相談に乗ってもらって、何か新しい展開を思いついたとしても、香澄さんの仕事には何の利益も生まない。

『愚痴ってごめん。俺は大丈夫。早く帰れるなら、ゆっくり休んで』


「……なんだよ、このスタンプ」

 後ろ髪を引かれる思いで送ったメッセージには、画面の中を怒り狂って転げまわるクマのスタンプが返されてきた。
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