夏の忘れもの
将大が東京に引っ越してきて、一緒に暮らすようになってから四ヶ月が経ち、また夏がやってきた。
偶然にも彼の会社と私の会社の最寄り駅が一駅しか離れておらず、時間が合うときは今日みたいに待ち合わせをして一緒に帰っている。
わざわざ私の最寄り駅まで歩いてきてくれる彼は、本当に優しいと思う。
きちんと私の家まで挨拶に来てくれた将大を、私の両親もとても気に入っている。彼が、私の初恋の相手だと気づいた母にはニヤニヤした顔で見られてとても恥ずかしかったが……。
ちなみに、彼の会社はうちとも取引のある大手総合商社だ。しかも本社への転勤は栄転で、彼は営業部の係長に昇進したらしい。
思わぬハイスペックぶりに驚いたが、私にとっては将大は将大なのでそのへんはあまり気にしていない。
「約束って、例の彼氏さんですか?」
彼とそういう仲になってすぐ、江川くんには彼氏ができたことを話した。だから、もうモテるんだから私なんぞに構わず他の女の子にいけばいいのに……。