亡国の王女と覇王の寵愛
「……残念ながら、グスリール王国は攻め滅ぼされたようです。わたくしのリステ王国と同じように」
「まさか、リステ王国の?」
寂しげな笑顔を浮かべ、イラティは頷いた。
彼女はグスリール王国よりも先に、ヴィーロニア王国によって攻め滅ぼされた、あのリステ王国の王女だったのだ。急に親近感が沸いてきて、レスティアは彼女に向き直る。
「そうだったのですね」
「レスティア様のお気持ちは、わたくしにもわかります。ですからジグリット様に無理に頼み込んで、こうして会わせて頂いたのです。祖国を滅ぼしたヴィーロニアを恨んでいるでしょう。ですが、今は何も言わず、逆らわずに心静かに過ごされたほうが良いかと思います。そうすればすぐに、この幽閉部屋からは出られるでしょう」
ヴィーロニア王国の覇王ジグリットは、噂に違わず恐ろしい男なのだろう。
きっと他国の王女だろうと、逆らう者には容赦しない。イラティはレスティアの身を案じて、そう助言してくれたのだ。
「わたくしも、ほんの少し前まではこのような部屋に幽閉されていました」
イラティは、ふと視線を手の届かない場所にある窓に移し、まるでひとりごとのように呟く。
「誰かが助け出してくれるのを、ただひたすら待ち続けていました。でも、誰も来なかった。自分で抜け出すしかなかったのです」
淡々とした口調には、深い絶望が染みついているように見えた。
彼女だって祖国にいたときは、王女として大切にされていたに違いない。それなのにリステ王国が滅ぼされてから、こんなにも変わってしまうのだろうか。
その姿を見ると、未来の自分の姿を見ているようでぞっとした。
これからは希望も自由もなく、ただ生かされるだけの人生をこんな暗い場所で過ごすのだろうか。そうなった自分の姿を想像して、レスティアは身を震わせる。
俯いたレスティアを慰めるかのように、かつて同じように王女だったイラティは優しく告げた。
「ですがわたくしと違って、レスティア様ならば助けだそうとする人が来てくれるかもしれません。あのグスリール王国の、たったひとりの王女なのですから。そのためにも、早くここから出たほうが良いでしょう。幽閉部屋の警備はあまりにも厳重で、たとえ誰かが救出を試みたとしても、辿り着くことは不可能です」
「救出……」
その言葉は、今のレスティアには虚しく響いた。
我先にと、争うように逃げて行った侍女達の姿を思い出す。
「まさか、リステ王国の?」
寂しげな笑顔を浮かべ、イラティは頷いた。
彼女はグスリール王国よりも先に、ヴィーロニア王国によって攻め滅ぼされた、あのリステ王国の王女だったのだ。急に親近感が沸いてきて、レスティアは彼女に向き直る。
「そうだったのですね」
「レスティア様のお気持ちは、わたくしにもわかります。ですからジグリット様に無理に頼み込んで、こうして会わせて頂いたのです。祖国を滅ぼしたヴィーロニアを恨んでいるでしょう。ですが、今は何も言わず、逆らわずに心静かに過ごされたほうが良いかと思います。そうすればすぐに、この幽閉部屋からは出られるでしょう」
ヴィーロニア王国の覇王ジグリットは、噂に違わず恐ろしい男なのだろう。
きっと他国の王女だろうと、逆らう者には容赦しない。イラティはレスティアの身を案じて、そう助言してくれたのだ。
「わたくしも、ほんの少し前まではこのような部屋に幽閉されていました」
イラティは、ふと視線を手の届かない場所にある窓に移し、まるでひとりごとのように呟く。
「誰かが助け出してくれるのを、ただひたすら待ち続けていました。でも、誰も来なかった。自分で抜け出すしかなかったのです」
淡々とした口調には、深い絶望が染みついているように見えた。
彼女だって祖国にいたときは、王女として大切にされていたに違いない。それなのにリステ王国が滅ぼされてから、こんなにも変わってしまうのだろうか。
その姿を見ると、未来の自分の姿を見ているようでぞっとした。
これからは希望も自由もなく、ただ生かされるだけの人生をこんな暗い場所で過ごすのだろうか。そうなった自分の姿を想像して、レスティアは身を震わせる。
俯いたレスティアを慰めるかのように、かつて同じように王女だったイラティは優しく告げた。
「ですがわたくしと違って、レスティア様ならば助けだそうとする人が来てくれるかもしれません。あのグスリール王国の、たったひとりの王女なのですから。そのためにも、早くここから出たほうが良いでしょう。幽閉部屋の警備はあまりにも厳重で、たとえ誰かが救出を試みたとしても、辿り着くことは不可能です」
「救出……」
その言葉は、今のレスティアには虚しく響いた。
我先にと、争うように逃げて行った侍女達の姿を思い出す。