亡国の王女と覇王の寵愛
第二章

 どんなに悩んでいても、夜は永遠には続かない。暗い部屋に佇んでいたレスティアは、窓から差し込む光に気が付いて顔を上げた。
 いつのまにか朝になっていたらしい。部屋の外で人の動く気配がする。
(私はこれから……どうなるのかしら)
 いくら考えても、答えはでなかった。
 国もない。両親もいない。死ぬことさえ許されない今、こんな自分に何が残されているのだろうか。
(……罪)
 気になっているのは、ジグリットが口にしていた罪という言葉。 
 罪とは何なのか。
 あの国が滅びなければならなかった理由は何か。
 敵国の王の言葉だ。
 自らを正当化しようとして、あんな言葉を口にしたのかもしれない。それでも罪という言葉が気になってしまう。
 敵国の王の言葉に懐柔されてしまったのだろうか。
 自分の心の在処を探るように、レスティアは胸に手を当てた。
(……ううん、そうじゃない)
 ひとりきりの部屋の中で、首を強く横に振る。
 あの憎しみも、国を滅ぼされ両親を殺された恨みも忘れてなどいない。ただ彼の言葉を嘘だと断言できるだけの知識がなかった。それは恥ずべきことだと思っている。
 いくら病弱だったとはいえ、王太女だった。まだ遠いとはいえ、いずれは女王となる身だった。それなのに自国が侮辱されたときに、反撃の言葉を持てなかった。
 あの国に罪などないと、はっきりと言えなかった。
 それが悔しい。
(もっと、知識が欲しい……)
 やがて昨日と同じように、イラティが朝食を持って訪れた。
 食欲はまったくなく、スープさえも喉を通らない。無理をして食べる気にもなれなかった。イラティは心配そうに労ってくれたが、彼女もずっとこの場所にいられるわけではない。レスティアを気遣いながらも帰るしかなかった。
< 19 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop