可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
私達が一緒に住むと決めたのは、あの打ち上げの次の日だった
週明けからまた別々に仕事だねと何気なく話していたら


「一緒に暮らしませんか?」


と相川くんが言った
一瞬びっくりしたけど、私は頷いた
相川くんは照れながらも嬉しそうに笑って私の手を握り、更にこう言った


「結婚前提の同棲ってことでお願いしたいんですが、いいですか?」


と……
私は泣きながら頷いた


「……よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。奈南美さん」


それからその日は、不動産屋を巡って部屋を探した
今の相川くんの家に私が越してくればいいと言ったけど


「どうせなら、新しいスタート切りたいじゃないですか」


と相川くんが譲らず、新しい部屋を探すことにした
運がいいことに、今の相川くんの家より会社からは遠いけど、新しくて広い部屋が見つかったので、そこに決めた
それから、バタバタと引っ越して、人事異動もあり、ゆっくりする暇もなかった


「いただきます」
「いだだきます。美味しそう。ニラ豚だ。ごめんね、なかなか作れなくて」
「いいえ。奈南美さんの方が大変なのは分かるから。気にしないで」
「週末は私が作るね」
「うん、期待してる」


相川くんは、一緒にに暮らしはじめてから、私に敬語を使わなくなった
何でだろう?と思って、理由を聞いてみたが


「願掛けの半分は叶ったから。後の半分が叶ったら、呼び捨てで呼ぶからね」


と言われた
そう言えば、付き合い始めたころそんなことを言っていたなと思いつつ……
結局どんな願掛けかは、また教えてもらえなかったけど


「奈南美さん、週末は休めそうなの?」
「うん、社長がね『週末はちゃんと休んで、平日はちゃんと働け』っていう方針なんだって。だから、滅多なことがない限りちゃんと休めるよ」
「じゃあさ、今度の週末は出掛けない?俺達、最近まともにデートしてないし。奈南美さんの料理は捨てがたいけどね」


相川くんの提案に思わず箸が止まって、見つめてしまった
相川くんは苦笑しながら言った


「出掛けるの嫌?」


私は思いっきり首を横に振った
それを見た相川くんは、声を上げて笑った


「じゃ、どこに行くか考えとかないとな。俺が行きたい所でいい?」
「いいの?お願いして」
「うん。奈南美さん忙しそうだし」
「じゃ、楽しみにしてるね」
「俺も楽しみ。さ、食べよう」


週末は相川くんとデート
それだけで、仕事が頑張れる気がした
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