可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
パーティーが終わり、娘の祥希子を両親の家に迎えに行き、やっと家に帰りついた
祥子は着替えもせず、祥希子を抱っこしたままソファーに座っている
僕は祥子の隣に座り、祥子の肩を抱いた


「お疲れ様。祥子」
「ねぇ、慎一郎さん」
「ん?」
「祥希ちゃんは、産まれてきて良かったって思ってくれてるかな」
「祥子」


僕は祥子を祥希子ごと抱き締めた


「それは、そう思われるように、僕達が祥希子を育てなきゃいけないんだ」
「うん」
「祥子、進藤には相川が付いてる。それに、進藤社長は……」
「うん、分かってる。分かってるんだけど。辛いよ、慎一郎さん」
「そうだね。辛いね」



進藤社長は、娘を愛しているのに、敢えてそれを進藤に伝えようとしてない
どんな事情があるにせよ、親としてそんな辛い事があるだろうか
そして、進藤も感じているんじゃないんだろうか
自分が愛されているということを
だから、無意識に母親を求めているんじゃないだろうか


「僕の勘なんだけど」
「慎一郎さんの、勘?」
「うん。相川ならあの親子を救えると思う」
「本当に?奈南ちゃん、お母さんに甘えられる日が来る?」
「きっとね。それに、進藤には相川だけじゃなくて祥子もいるしね。今日の祥子は格好よかったよ」


そう言うと、祥子はやっと笑ってくれた


相川と進藤には幸せになってほしいと思う自分がいる

考えてみたら、進藤は元彼女なのにだ
別れた後は会社ですれ違うだけでもうんざりしていたのに
それがどういう訳か、妻と親友になり、部下と付き合い、一緒に仕事をしたりと、何かと切っても切れない関係になってしまっている


いつか相川に聞いたことがある


「お前、進藤と付き合うのに抵抗がなかったのか?」


すると相川は笑いながらこう言った


「じゃ、部長は祥子さんの元カレが俺だったら、結婚しなかったんですか?」


一体どんな例え話してるんだと思ったが、なんだか妙に納得した
祥子が過去にどんな男と付き合っていようが、僕は祥子と結婚しただろう
それだけ、祥子を手に入れたくてしょうがなかったから


つまり、相川も同じ気持ちなんだろう
進藤の事が本当に好きだから、過去なんてどうでもいいと
それだけ好きなら、相川ならどうにかして乗り越えるだろうと思う
進藤と幸せになるために


「相川なら、進藤の事を幸せにするためにどんなことでもするよ。きっと」


そう呟くと、祥子は小さく笑って、そうだねと言った
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