可愛げのない彼女と爽やかな彼氏

父

「お母さんとのことは俺に任せて。奈南美さんは、仕事と結婚式のことだけ考えてくれてたらいいからね」


そう言われても私の母親のことなのにと、口を挟もうにも相川くんは大丈夫だからと笑っていた


そんなこんなで、結婚式まであと数週間
式のあとすぐに新婚旅行に行くことにしたのでやれる仕事はなるべくしておかないとと忙しく過ごしていた


「進藤課長、明日の金曜日は休んでいいぞ。なんなら今日はもう帰れ」
「は？」
「社長命令だ」
「そんな無茶苦茶な……」
「じゃ月曜日に〜」


吉田社長はそう言って手をヒラヒラさせて帰って行った


休めと言われてもやることは山ほどあるんですけど？とため息をついた


「社長命令なんか無視して出勤しようかしら？」


そう呟いたら部下達に必死に止められたので、明日の仕事を指示して帰ることにした


「奈南美さん、明日社長命令で休みでしょ？俺も休みとったから一緒に出掛けよう」


家に帰ったきた相川くんが開口一番、満面の笑みでそう言うのでなんとなく感づいてしまった


「あの人の……母のところに行くの？」


俯いた私を相川くんは抱きしめて背中をポンポンと優しくなだめた


「大丈夫。俺は隣にいるから、大丈夫だよ奈南美さん」


私は相川くんの優しさに涙を堪えるのが必死だった