可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
そして次の日、車に乗って向かって行く場所はどうやら母の所じゃないらしく


「お母さんに会う前に会ってほしい人がいるんだ」
「会ってほしい人?誰?」
「内緒。でも奈南美さんに会えるのをとても楽しみにしてる人。あ、見えてきた。あの家だよ」


相川くんが指さした先には誰が見ても純和風な大豪邸というような立派な家があり、門の前に車を止めると勝手に門扉が開いた


「相川くん?」
「何?」
「誰の家なの?ここ。私に何か関係あるの?」


戸惑っている私を尻目に相川くんは大丈夫だよと言うだけで何も教えてくれない
そして車は玄関に着き、家の中から一目で執事だろうというような初老の男性が出てきた


「相川様、お待ちしておりました。奥様が首を長くしてお待ちしていますよ。こちらが、奈南美様ですか?」
「こんにちは、杉山さん。奈南美さんを連れて来ました」


相川くん、この杉山さんを知ってるの?
しかも奈南美様って?どういうこと?
ていうか、ここは誰の家なの?


私が何も言えずにいると、杉山さんが優しく微笑んでどうぞと家の中に迎え入れてくれた
相川くんも、奈南美さん行こうと手を差し出したので、私は相川くんの手を握って、一緒に杉山さんの後をついて行った


それにしても、ものすごい豪邸だった
どこまで続いているのだろうかというような長い廊下
その廊下に飾られている調度品や絵画、どれも素晴らしいもので、私はそれらに見とれてここがどこなんだと考えるのを忘れていた


「こちらの部屋でお待ちください。今、奥様を呼んでまいります」


そして通された部屋は、応接間なのだろう
それでもうちのリビングより広いような気がするが……

私達がソファーに座ると、杉山さんは部屋を出て行った
多分、奥様と呼ばれている人を呼んでくるんだろう


私がふうっと力が抜けたように座っていると、相川くんが大丈夫?と顔を覗き込んできた


「いい加減教えてくれてもいいんじゃない?」
「ん?」
「ここは誰の家なの?奥様って誰なの?相川くんはここに来たことがあるの?」
「最近は毎日のように来てたかもね」
「毎日?どういうこと?って、答えになってないじゃない」


相川くんに詰め寄っていると部屋の扉が開いて、杉山さんと、車椅子に乗った白髪のご婦人が入ってきた
私はそのご婦人を見た瞬間、息を飲んだ
だって、その人は私に瓜二つだったから
杉山さんは私達の前までそのご婦人は連れてきた
そしてご婦人は私を見てにっこり微笑んでこう言った


「その先は私からお話しするわ。奈南美さん、やっと会えた。ずっと会いたかったわ……」


私の手を握って、ご婦人は涙をポロポロとこぼしていた
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