可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
疲れた体に鞭打ってデスクワークをこなしていたら、社長が出社してきた


「おはようございます、社長。金曜日はありがとうございました」
「いやいや、有意義な週末が過ごせたかな?それは後から聞くとして……ちょっとみんないいか?」


社長の言葉で秘書室メンバーが立って社長に注目する


「進藤課長の結婚式ももうすぐだし、ちょっとこれからのことを確認しようかと思ってね。進藤課長、結婚式の後は新婚旅行で1週間特別休暇を取ってるのは間違いないかい?」
「はい。みんなには迷惑をかけるので申し訳ないのですが」


他のメンバーはそんなことはありませんとそれぞれ言ってくれた


「それなんだがね。ついでに結婚式前の1週間も休んだらどうだ?有給まだ残ってるだろ?」
「いえ、そんなこと出来ません!それでなくてもみんなに負担をかけるのに、それ以上は休めません!」
「進藤課長が2週間休むことについて、他のみんなはどう思う?」
「ちょっ、社長!」


社長は私の言うことを無視してみんなに投げかけた
すると、倉橋さんがあの……と口を開いた


「他部署の女性が結婚する時は、有給を使いながら結婚式の準備をしています。現に、私も3年前結婚する時はそうしてました。他の社員もそこのところは理解していますので、助けてくれますし」


他のメンバーもうんうんと頷いている


「みんなで話してたんですよ。進藤課長いつ結婚式の準備してるんだろう?って」
「名村くん……」
「もうちょっと俺たちのこと頼りにしてくれてもいいのになあ、ってな?宇佐美?」
「はい。矢野さんの言う通りです。進藤課長」
「矢野くん、宇佐美くん……」


みんながそんなこと思ってくれてたなんて


「嫁入り前はやっぱり家族ともゆっくり過ごしたいし」
「佐藤さん……」
「エステにも行かなきゃいけませんし!」
「手塚さん、それって……」


手塚さんの言葉にみんな笑った
すると社長がパンパンと手を叩いた


「じゃ、決まりだな。進藤課長は2週間休むこと。進藤課長がいない間、私を担当するのは、矢野くんと倉橋さんの2人でよかったかな?」
「はい」
「はいっ」
「他のメンバーはこの2人のサポートしつつ、臨機応変に対応すること。これでいいか?」
「「「「はいっ」」」」


みんなが元気よく返事しているのを呆然と見ていると社長が私にニヤリと笑って口を開いた


「じゃみんな仕事に戻っていいぞ。進藤課長、後で社長室に来てくれ」


そう言って颯爽と社長室に向かって行った
社長を見送るとみんなはまた席に座ってデスクワークに戻った
私はそんなみんなにありがとうと頭を下げて急いで社長室に向かった
そうじゃないと、みんなの前で泣いてしまいそうだったからだ
それくらい嬉しかった
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