極上の恋愛はいかが?
「……高原さんは、樹が好きだと聞いたことがあるけど…」
「はぁ?」
まさに鳩が豆鉄砲を食らった顔とはこう言う顔になるんだろう。
思いっきり視線を上げたら、社長は何かを企んでいるかような表情で笑った。
目の前に居るのが社長と分かっていても突拍子も無い事を言い出されてしまっては敬語すら忘れてしまいそうだ。
「えーと…それはいったいどこをどうしらそんな話に…」
「いや、間違いだったらいい。女性社員たちがそんな話をしているのを小耳にしたから聞いてみただけ」
これは一体どういう事なのか、頭の中を整理したいのに整理が出来ない。
思考回路が止る。
チラリと見た視線に気付いたのか、目の前に居る社長がニコリと微笑んだ。
慌てて頭を横に振り、目線を外すが鼓動の早さは誤魔化せない。
どの表情も見てみたいとは思うが、この笑顔は苦手だ。
心を見透かされているかのような気がしてたまらない。
「高原」
「はい!」
「寒い」
「そ、そうですね…今にも雪が降りそうですもんね…」
さすがにこの寒空ではいくら世界有数の豪雪地帯出身で慣れているからと言っても寒い。
さすがの莉央にも寒さをどうにかすることができない。
「温かいゆず茶でも飲みたいな」
「あ…はい。では、社長室に戻られますか?」
「え?何言ってんの?高原さんは社長室に戻って自分でゆず茶を入れさせちゃうような子だったの?」
「いっいえ…そんなことはっ!」
「よし、高原さんには特別に俺の部屋に招待してあげよう」
「えっ?」
やはりこの人はとんでも無い事を突然言う人だと再確認した。