結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
それに合うヒールのあるサンダルも買い、家に着いた頃にはクタクタになっていた。

なぜこんなに一生懸命になっているんだろう。本命のデートというわけでもなく、ただ食事をごちそうしてもらうだけなのに。

……と、途中でふと考え込んでしまった私に、咲子ちゃんはこう力説した。

『社長との仲がぐーんと進展する運命の日になるかもしれないんですから、気合入れていかないと!』と。

いつだったか、紫乃姉さんからも似たようなことを言われたっけ。今まで私があまりに男っ気がなかったから、皆ここぞとばかりに言ってくるんだろうな。

私と社長がどうこうなることなんて、幽霊と付き合うくらいありえないことだっていうのに。

とは言え、来週末のことを考えると、どうしてもドキドキしてしまうのだけど。


「ただいまー」と声をかけて部屋に上がり、ひとまずリビングのソファに身体を沈めた。

母はすでにスナックに出勤したらしく、いるのは夕飯を準備している紫乃ねえだけ。

ラフな部屋着姿でこちらにやってきた彼女は、缶ビールのプルタブを開けつつ、私の隣に置いたショップの紙袋の中を覗き込んで目を丸くする。

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