結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
おかげで泣き止むことができたし、それからチョコレートにハマってしまって、今に至るというわけだ。

あの些細な出来事がこうして私の人生に関わっているのだから、不思議なものよね……。

ぼんやり考えてしまっていた私は、小首を傾ける社長に「どうかしたか?」と声をかけられ、はっとした。

この仕事を選んだ動機は至極単純なものだから、話すのは恥ずかしい。

私は「いえ」と笑ってごまかし、なんとなく気になっていたことを質問してみることにする。


「社長は、やっぱり会長が叔父様だからサンセリールに入社したんですか?」


前社長の叔父様が会長に就任することになり、副社長だった彼が昇格したことはもちろん知っている。

でも、お父様の仕事を継がれなくてよかったのかな、とほんの少し疑問に思っていたのだ。

突然の質問にもかかわらず、私の疑問をすべて読み取ったかのように、社長は詳しいことを教えてくれる。


「あぁ、叔父には跡取りがいなくて困ってたからね。俺の親父は高校教師で、そっち方面には兄貴が進んでるよ」

「そうだったんですか!」


社長のお父様が高校の先生で、お兄さんがいるということも初めて知った。

彼の新しい情報を手に入れられたことにちょっぴり感激していると、彼は「それに」と話を繋げる。

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