結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
「……変わらない? なら変えてやるまでだ」


強気な言葉が耳に響いた次の瞬間、私たちの間の空気が動いた。

鼻腔をくすぐる、より強く感じる社長の香り。目に映る、長いまつ毛が縁どる伏せられた瞳。言葉を封じる、柔らかな、唇。

──く、クチビル!?


ひとつひとつ、五感で確認していくと、自分には信じられないことが起こっていた。

泉堂社長に、キスされている。

そう理解したのは、すでに彼の唇がほんの数センチ離されたときだった。

目を見開いたまま、息もしているかいないかわからない状態で唖然としていると、彼の口角が意地悪そうにクッと上がる。


「悪い、つい黙らせてやりたくなって」

「なっ……」


だからって、好きでもない相手にこんなことしちゃダメでしょ! それに、それに……私、ファーストキスだったんですけど!!

恋人とするものだと信じて疑わなかった初めてを奪われてしまったことに、絶望にも似た気持ちになっていると、再び綺麗な顔が近づいてくる。


「今のキスで崩れてきただろ、お前のその凝り固まった理性。……もっと壊してやろうか」

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