結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
温かい気持ちを抱きながら案内を続け、ちょうど最後のパッケージの工程を説明し終わったとき、作業員のひとりが少々急いだ様子でこちらにやってきた。


「社長、外で綾瀬さんがお呼びです。取引先から大事な連絡があったようで、早急に来ていただきたいと」

「そうですか」


社長は答えながらちらりと私を見下ろす。きっと、ここを離れて大丈夫か懸念しているのだろう。

本当に心配性だなぁと笑いそうになりつつ、私は明るく声をかける。


「見学はここが最後ですし、大丈夫ですよ。行ってきてください」


少しだけ迷いが表れた瞳で私を見つめていた彼だけれど、しばらくして頷き、口を開いた。


「……わかりました。倉橋さん、二階のミーティングルームにご案内をお願いします」

「はい」


出された指示に返事をすると、社長は葛城さんに一礼して工場をあとにする。

このあとは、以前接待のときに話していたクリオロ種を使ったチョコレートを含め、サンセリールの商品を試食していただく予定だ。まだまだ気が抜けない。

気合を入れ直して、「じゃあ、ミーティングルームに行きましょう」と葛城さんに声をかけ、工場の出口に向かった。

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