結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
しかし、入り口とは別の、今は誰もいない通路に出た瞬間、葛城さんは私の手首をぐっと掴んで引き留める。


「葛城さん?」


驚いて振り向くと、彼は片手で帽子とマスクを素早く取り、少し乱れたマッシュヘアと綺麗な顔が露わになった。


「邪魔者がいなくなった今のうちに言わせて。今日ここへ来たのは、君に会うためでもあるので」


社長を邪魔者扱いする度胸はさすがだと思いつつ、なにやら真面目な表情で私を見つめてくる彼に目を見張る。

その唇から、耳を疑うようなひとことが紡がれた。


「僕は、真剣に倉橋さんとお付き合いしたいと思ってる」


…………お付き合い? 葛城さんが、私と!?


「はいっ!?」


帽子もマスクもつけたまま、見開いた目だけで驚愕を表して叫んだ。

これって、一応告白なの? まだ会うのは二回目なのに、私のことを気に入ってくれたってこと?

固まる私に、葛城さんはどこか遠い目をして言う。


「初めてだったんだ、あんなに元素について語り合えたのは。こんなマニアックな趣味を理解してくれる人は、これまでにいなかったから」

「でしょうね……」


思わず同意してしまった。理系話が好きな私も同類だから、それはよくわかる。

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