結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
「倉橋さん」


私を呼ぶ声が聞こえ、はっとして振り向く。

一瞬、社長が戻ってきてくれたのかと思ったものの、廊下の先にいたのは、無表情でこちらを見据える氷室くんだ。


「氷室くん!」


いつからいたんだろう、全然気づかなかった。

白衣の裾を揺らしてこちらに向かってくる彼は、チラリと葛城さんに目をやりつつ言う。


「お取込み中すみません。どうしても今聞きたいことが」

「あ、えっと……」


そうよ、すっかり意識が逸れていたけど、今は仕事中なのだ。こんな話をしている場合じゃない。でも、大事なお客様の相手をしているわけだし……。

迷う私に、葛城さんは白衣を脱ぎながらにこりと笑いかける。


「どうぞ話してて。僕はロビーで待ってるよ」

「すみません、すぐ行きますので」


気を利かせてくれたことと、どうしたらいいかわからない状況が中断されたことに正直ホッとして、ようやく帽子やマスクを取りながら頭を下げた。

そして葛城さんの白衣を受け取ろうとした際、彼の顔が私の耳元にふわりと近づく。


「僕は本気だから、ちゃんと考えておいてね。また今度話そ」


コソッと告げられ、心臓がドクンと一度強く鳴った。

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