結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
「しゃ、しゃ、ちょぉ……!?」


今の私には正義のヒーローみたいに見える社長は、手探りでデスクの間を通ってこちらに向かってくる。

ドアに一番近い島には、壁側に四台、研究室側に四台あるデスクを向き合わせた八台から成る。そのうち、研究室側の三台目にあたる私のもとには、すぐにたどり着いた。

しゃがんで正面から私の肩を優しく掴む彼の心配そうな顔が、暗がりに慣れてきた目に映る。私は涙を拭うのも忘れ、ぽかんとするだけ。


「なんでここに……」

「さっき課長に会って、話の流れでお前が残業してることを聞いたんだ。たまたま俺も残ってたから、まだいるなら家まで送ってやろうかと思って来てみれば……」


社長は苦笑を浮かべ、大きな手で包み込むようにそっと髪を撫でる。


「停電でそんなに怖がらなくても」


子供をあやすように撫でてくれる彼の手に安心感を抱きつつも、根深い不安は完全に取り除くことはできない。


「停電じゃなくて、雷が怖いんです。……私の父は、落雷で感電して亡くなったので」


次第に目線を下に落としつつ、若干震えた声で打ち明けると、髪を撫でる手の動きがぴたりと止まった。

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