結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
年間二十人ほどいるという落雷による感電事故に、まさか自分の父が遭ってしまうとは思いもしなかったし、信じられなかった。

父が亡くなった当時は、ただの雨の日ですら家から出られないほど怖かったものの、なんとか克服して今に至る。

それでも、雷だけはやっぱり耐えられない。


「屋内にいれば比較的安全だという科学的根拠があっても、どうしてもダメなんです。いつ自分の身にも何百万ボルトの電圧が流れるかと思うと──」


また泣きそうになりながら早口でまくし立てていると、真っ暗な事務所が一瞬明るくなり、再びガラガラと轟音が鳴り響く。

「きゃぁ~!」と意気地のない声で叫び、思わず目の前の社長の胸にしがみついた。

彼の腕が、しっかりと私を包み込んでくれる。その感覚はなによりも頼もしくて、徐々に恐怖が和らいでいく。


「よしよし。怖くない、怖くない」


おまじないを唱えるようにしてぽんぽんと背中を叩かれ、ふいに懐かしく愛おしい記憶が蘇ってきた。

……そういえば、私の雷嫌いはお父さんが亡くなる前からだったっけ。大きな音に怯える小さな私を、お父さんも同じように抱きしめてあやしてくれていたことを、今思い出した。

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