結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
怯えながらも、早く家に帰りたい一心でなんとか仕事を続け、あともう少しで終わろうかというときだった。

一瞬空が明るくなったかと思うと、この世界が割れるんじゃないかというくらいの大きな音と地響きが身体に伝わり、目の前が真っ暗になった。


「きゃあぁぁ~っ!!」


両方の耳を塞ぎ、思わず悲鳴を上げて、椅子から転げ落ちるようにしてフロアにうずくまる。

い、い、今の、絶対近くに落ちたよね!? 嫌だ、怖い……誰か助けてぇぇ!

停電のおかげで、暗黒の異世界に迷い込んでしまったような気分でガタガタと震えていたそのとき、ガチャリとドアが開く音と同時に、男性の声が闇を切り裂いた。


「どうした!?」

「ふぇ……っ?」


焦燥を滲ませた声に続いて、情けない声を漏らした私は、両手で頭を抱えたまま目を開ける。

ドアのほうに視線を向ければ、そこに立っていた誰かがこちらへ向かってくるのが、かろうじてわかった。


「綺代!」


私をそう呼ぶ、社内で唯一の人を認識した瞬間、心の中に光が差し込んだような気がした。

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