結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
順調に業務は進み、迎えたお昼休憩。私たちは各々用意した昼食を持って、本社から徒歩二分の公園に向かった。

七月中旬に差しかかる今日はすっきりと晴れていて、暑いけれど木陰にいれば気持ち良く過ごせる気候だ。

ひとつのベンチに氷室くんが、その隣のベンチに私と咲子ちゃんが並んで座り、お弁当を食べながら葛城さんとのことを白状した。

案の定、氷室くんは無表情を崩さずに聞いていて、咲子ちゃんは正反対に表情をコロコロと変えている。

電話での件を話した今、彼女は顔をしかめてお怒りになっているところだ。


「突然、結婚前提の交際を申し込んできて、それを断ったら取引しないって!? どんだけ自己中なんですか! ロクな人じゃないですね!」


それがね……さっこちゃんの大好きなパティスリー・カツラギのオーナーシェフなんだよ……とは口が裂けても言えない。

私はぎこちなく笑い、卵焼きをひと口かじって思考を巡らす。

かなり勝手だなぁと私も思うけれど、葛城さんもただ私を困らせたくて言っているわけではないから、邪険にできないのよね。


「悪い人ではないし、嫌いなわけでもないんだけどね。だから、この会社に……社長に迷惑をかけるくらいなら、彼と付き合ったほうがマシなんじゃないかとも思う」

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