結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
社長はドアを開けるのを一旦やめ、私の家の前だからだろうか、紳士の姿で声を投げかける。


「この間、ちゃんと雨に濡れずに帰ったんですか?」

「あー、えっと……はは」


傘を返したときのことを思い出し、曖昧な返事をしてへらっと笑ってみせた。社長は怪訝そうに目を細め、けれど穏やかに諭す。


「ちゃんと寝ていてください」

「そんなにひどい風邪じゃありませんから」

「ただの風邪でも、こじらせると痛い目を見ますよ。大事にして、今週中に治してください」


なぜか具体的な期間を示され、私は首をかしげる。


「今週中?」

「君の願いを叶えてあげます。私では力不足かもしれませんが」


意味深な笑みを向けられてそんなことを言われるも、なんのことやらさっぱりわからない。

私の願いって……なにか話したような覚えはないけどな。

頭の中をハテナマークでいっぱいにしている間に、「お大事に」とひと声かけた社長は、颯爽と車に乗り込んで去っていってしまった。

窓を開けたままぼうっと見送っていると、お母さんが興奮気味に部屋に入ってくる。

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