結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
「ちょっと綺代、泉堂さんの息子さんってサンセリールの社長になってたのね! びっくりしたわ~、まさかタツくんが叔父さんの跡を継いでたなんて」


“タツくん”という呼び名を久々に耳にして、なんだかむず痒い気持ちになる。

そういえば、お母さんは顔見知り程度の関係にもかかわらず、親しげにそう呼んでいたっけ。

──お父さんの友人のひとりだった、泉堂さんの息子さんのことを。


実は、私はサンセリールに入社する前から社長のことを知っていた。と言っても、知っていたのは彼の名前くらいだけど。

お父さんが生きていた頃、泉堂さん、つまり社長のお父様の話をよくしていて、彼の家族とも会ったことがあると話していたのを覚えている。

詳しい内容までは覚えていないものの、ご子息の次男が“達樹”という名前だということだけは記憶に残っていた。

そしてサンセリールに就職してから、重役の中に社長の名前を見つけて驚愕したのだった。

でも、万が一同姓同名ということもあるかもしれないし、覚えているのも私だけだろう。だから“タツくん”に関してのことは、これまでずっと胸の奥で眠らせていたのだ。

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