結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
「どうしたんですか？」


綾瀬さんは少し決まりが悪そうに目を逸らし、珍しく口ごもるような調子でこんなことを言った。


「この間は、誤解させるようなことを言って悪かったわ」


予想外の謝罪に、一瞬キョトンとした私はすぐに目を見開く。


「どうしたんですか!?」

「なんとなく謝りたくなっただけよ、うるさいわね」


同じ言葉を繰り返すと、美人秘書は眉間にシワを寄せて悪態をついた。

相変わらず厳しいけれど、謝られたことの驚きでそれも気にならない。

ぽかんとしたままの私に、腕を組んだ彼女は気まずそうに、でもしっかりと話し出す。


「あなたに似てるっていう子が、社長の姪御さんだってことは知ってた。それを利用して、ちょっと引っ掻き回してやろうと思ったの。社長があなたに惚れ込んでいることにも気づいてたし。……ただの嫉妬よ」


真意が明かされ、やっぱりそういうことだったのだと納得していると、綾瀬さんは仏頂面のまま、「別に、あなたが嫌いでしたわけではないから」とつけ加えた。

私は単純だ。今のひとことだけで彼女に対する苦手意識が薄れていくのだから。

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