結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
「この私を蹴落としていったんだから、せいぜい上手くやりなさいよ」


綾瀬さんはぶっきらぼうに言い放ち、一歩を踏み出して私の前から去ろうとする。

今のも嫌味に聞こえるけれど、もしかしたら私を誤解させたことへの罪滅ぼしのエールなのかもしれない。そう思うと心が丸くなったように感じ、私は彼女に向かって声を投げる。


「綾瀬さんって、ツンデレだったんですね」


思わず、というようにこちらを振り返った彼女は、ほんのわずかに頬に赤みが帯びていた。

おっ、と目を丸くする私を、彼女はすぐに冷たい表情になって睨み据える。


「……やっぱりあなたって気に食わない」

「すみません冗談です」


そそくさと謝れば、彼女の口元が緩み、ふふっと笑みが漏れた。それは私が初めて見る彼女の自然な笑顔で、とても可愛らしく、魅力的だと思った。

どうか、彼女にも幸せな未来が訪れますように。



今日の仕事も無事終えた私たちは、会社の最寄駅前にある海鮮居酒屋にやってきた。

月曜なので飲むのはほどほどにしようと言いつつも、やはり最初は黄金のビールで乾杯だ。


「それでは改めて。綺代さん、おめでとうございまーす!」


咲子ちゃんの音頭でグラスを合わせ、私も改めて「ありがと」とお礼を言った。

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